【社協だよりいずもvol.148 令和5年10月20日発行号掲載】
NPO法人たすけあい平田理事長。
困ったときはおたがいさま
もともとは県外に住んでおり、夫の転勤をきっかけに知人や親類がいない出雲で暮らすことなった熊谷さん。ある時、子どもが熱を出しどうしても薬をとりに行くことができず、ダメもとで子どもの保育園で知り合った方に取りに行ってもらえないか聞いてみたところ、「おたがいさまなんだから、遠慮しないでいいよ」と快く引き受けてくれたことがあったそうです。「頼れる人がいなかった私はその言葉に本当に助けられた。困ったときすぐに助けてもえるのは遠くの親戚より近くの他人なのだと実感しました」と当時を振り返ります。
しかし、毎回知り合いに頼むとなると気を遣ったり時間が合わなかったりすることもあります。そんな暮らしの中のちょっとした困りごとを、気兼ねなく依頼できるような仕組みがあればもっと暮らしやすい地域ができると思い、熊谷さんはたすけあいの組織つくりに取り組み始めました。
今では、草取りや家の掃除などの家事支援から病院の付き添い、お話相手、ペットのお世話など、幅広い支援を地域で実現しています。「社会福祉協議会や民生委員さんなどたくさんの方に協力いただき、団体を立ち上げることができました。困っている声を聞くと、どうしても見て見ぬ振りができなくて…。困っているならなんとかしなきゃ!という思いで活動しています」と語ります。
たすけあいの輪を広げるために
長年たすけあい活動を続けていく中で、協力者の確保や高齢化などの課題も抱えています。特に車で病院等へ送迎する移動支援は、担い手である協力者に定年を設けていることや業務に関する講習を受ける必要があるため、支援を希望する声は増えても活動できる人は少なくなっているそうです。
「今後一人暮らしの方や高齢者が増えていくと、家族や近くに住む方だけで支えることは難しくなると思います。まずは、自分たちの活動を少しでも多くの方に知ってもらえるよう勉強会や地域の交流会に足を運んで、活動者の声や魅力を伝えています」と協力者の増加につながるきっかけづくりに取り組んでいます。「最近は若い世代の方にも協力してもらえるよう幼稚園などに声かけやチラシ配りをやってみようと思っています。一人でも二人でも協力してもらえる人がいるとすごく嬉しいですね」と笑顔で話します。
住んでよかったといわれるまちへ
熊谷さんにとって、活動の一番の励みは「ありがとう」の言葉。ある高齢者の方に掃除や病院までの移動の支援をしたとき「よその町に住んでいたらどうなっていたことか…。平田に住んでいてよかった」ととても喜ばれたことがあったそうです。その方は一人暮らしで親族も遠くに住んでいたため、毎日お手伝いに行き、看取りまで支援を続けました。その後、葬儀の場で息子さんから「自分たち家族ができないことをここまでやってくださり、本当にありがとうございました」とお礼の言葉をかけていただいたそうです。
「感謝の言葉ほど活動者の胸に響くものはありません。ちょっとした時間でも本人に寄り添い支援ができるたすけあい団体は家族や本人にとって大切な存在なんだと改めて感じました」と語ります。こうした感謝の言葉から、もっとできることがあればやってみよう!と奮起し、在宅の看取り支援や居場所づくりなど新しい活動にも取り組んでいます。
「身近に住む人同士でたすけあえる組織だからこそできることをこれからも進めていきたいですね」と力強く語る熊谷さん。おたがいさまの心と利用者の笑顔と感謝の言葉を胸にこれからも地域のために活動は続いていきます。