永井 向日葵 -「食」で地域を元気に!-

【社協だよりいずもvol.153 令和6年8月20日発行号掲載】
子ども食堂と学生をつなぎ隊の中心メンバー。島根県立大学健康栄養学科4年生。(令和6年8月現在)

管理栄養士の卵としてできること

 永井さんは管理栄養士をめざして勉強中の大学4年生。子ども食堂との出会いから、「子ども食堂と学生をつなぎ隊(以下、つなぎ隊)」を立ち上げ、市内の子ども食堂に学生がボランティアとして参加する活動に取り組んでいます。これは学生の「地域貢献をしたい」、「食事提供の現場に行く機会がほしい」という想いと子ども食堂の「人手が足りない」、「レシピに困っている」という両方の課題を解決する取組となっており、現在6ヶ所の子ども食堂で活動中です。

高校生で気付いた地域への想い

 域活動にふれたきっかけは、高校生の時に取り組んだ探求活動だったそうです。「一人ずつテーマを決めて研究をする機会があって、自分の興味があることってなんだろうと考えた時に、“地域を元気にしたい!”にたどり着いたんです。地域の人手不足や高齢化で夏祭りや子ども会が廃止になるのを目の当たりにして、人が集まる機会がなくなってしまうことが悲しくて…。自分は地域の人にみてもらって育ててもらった感覚があるので、地域に元気を取り戻したいと感じたんです。」と話します。

 その後、先生から市役所の方を紹介してもらい、隣接地域でまちづくり協議会が発足するとのことで毎週の会議に参加し始めた永井さん。この取組は地元でも取材され、注目されたそうです。その中で、人手不足→イベント減少→魅力がなくなる→人が来なくなるという負のスパイラルが生じるという学びがあり、「地域おこしの成功例などを知るなかで、食の力って大きいなと感じました。産業や農業とか地域全体で発展させるために大切なものだと実感して、食に携わる仕事がしたいなって。食のプロフェッショナルとして地域に入っていきたい!という気持ちで管理栄養士をめざすようになりました。」と進路を決めるきっかけになったそうです。

“こうなればいいな”が実現する喜び

 自身の生活のなかでも、「地域がこんな風になったらいいな」と感じていた永井さん。バス通学の経験からあるアイディアが生まれ、それによって地域が動き、形となったそうです。「バスを待つ場所がなかったので、誰でも使える場所があるといいなと感じていました。コミュニティスペースがあれば多世代の交流が生まれるんじゃないかって。これを提案して、実現したんです。バスが来るまでの居場所がないって大人には分からないことなので、学生の生の声が届いて形になったことがうれしかったです。」と、この経験が今の活動でも“したいことを言ってみよう”という後押しになっているそうです。

コロナ禍の学生生活と先生との出会い

 島根の大学を選んだ理由は、地元に似た雰囲気で、感覚的に地域に入りやすいと感じたからだったそう。ボランティアなどで動きたいと熱意を持って、入学したものの、それを阻んだのはコロナ禍。「学校はリモート授業が多くて友だちもなかなかできないし、地域に目を向けてもどんな活動があるか知ることさえ難しい状況でした。居場所はバイトしかなくて、1・2年生の頃は地域活動をしたい気持ちがなくなっていました。」と当時を振り返ります。

 そして迎えた3年生の春、今中教授と出会い、授業で子ども食堂へ行くことに。「先生の授業で食のプロとして地域に入ることを学んで、出雲市社協の方が講師で地域活動のことを話してくださったんです。“あ、地域に出ていいんだ”と想いが強くなりました。たまたま島根に来て、先生と出会って、仲間と地域でしたいことができて、自分は運がいいなと思います。」と出会いへの喜びを語ります。

同じ想いをもつ仲間と一緒に

 つなぎ隊のリーダーとしてメンバーをまとめる永井さんは、もともと意見を言うことが苦手な性格だったそう。しかし、今は自分のスタンスが変わったと話します。「自分がこうしたいと伝えたことでメンバーが集まったことがうれしかったです。同じ想いの仲間とのディスカッションは楽しいですし、こんな空間ができたことが幸せです。」と笑顔。「活動していて、時には嫌なこともあるけど、自分は一人じゃないし、もし間違ったことを言っても訂正してサポートしてくれるみんながいるので安心して進んでいけます。」と仲間への想いを語ります。

 そんな心強いメンバーと共に活動し、地域から刺激を受けた永井さん。「地域の笑顔のために、行動している大人がたくさんいることを改めて実感しました。活動者さん自身が活動そのものに元気をもらっている姿も印象的でした。誰かと協力して、何かを作り上げるってすてきだな、楽しいなと感じています。」と話します。

地域を「食」の力でもっと元気に!

 これまでの管理栄養士になるための学びとつなぎ隊での経験を活かし、今年8月『ごはん de まめフェス』を企画した永井さん。これは、「子ども食堂のことを市民や学生に伝えたい!」との想いから、市内の子ども食堂の協力のもと実現した取組でした。食事ブースや食育体験、子ども食堂の展示などそれぞれの強みを活かしたイベントで学生と地域の活動者が一つになってすすめてきました。

 「私が地域でやりたいことを実現するためには、色んな人の協力があってこそだと感じています。ゼロからの始まりだったので、自分の思いを伝えるためには、それが明確でないといけないこと、誰よりもその思いと向き合うことが大切だと学びました。ちゃんと熱があれば、それは人に伝わっていくものだと感じることができました。」と、かけがえのない財産となったそうです。

 「私の将来の夢は、地域を“食”で元気にすることです。食を通じて人と人がつながったり、おいしいご飯を食べて身体が元気になったり、そんな食を通じたすてきな空間が広がればいいなと思っています。これからも、どんどん地域の人とつながれるような活動をしていきたいです!」と力強く語ります。

 等身大の言葉のなかに地域への情熱がほとばしる永井さん。これから、人と人、人と地域をつなぎ、身体も心も元気にする「食」のプロフェッショナルとしての活躍に期待です!