松浦 絹子 -心に灯す小さな火種-

【社協だよりいずもvol.137 令和3年12月20日発行号掲載】
出雲市立第三中学校の生徒をはじめ子どもに関わる活動を長年続けている。
「どんな人でもどんな活動でも平等・対等」をモットーとし、20年にわたり活動。(令和3年12月現在)

「なんかおもしろいおばちゃん」になりたい

当時PTA役員だった松浦さんがほっておけなかったのは思春期の少年少女たち。彼らに会うため度々学校の保健室に通い、とにかく否定しない声掛けを続けたそうです。「遅刻しても”よく来たね”、金髪の子には”きれいな色ね”とか。一緒に話すうちにその子のいいところが見えてくるんです。”何でも話せるなんかおもしろいおばちゃん”になりたいと思っていました」と当時を振り返ります。

「話をしていくと子ども達の生活環境や思いが分かってくるんです。たとえば夜中に遊び歩く子がいたんですが、実は遅くまで働く母親の代わりに小さなきょうだいの育児をして、母親が帰宅してからやっと自由時間。そりゃ遊びたいよね、それでも登校してえらいね、と伝えていました。」

あの子たちとやってみよう!

「ボランティア」という言葉がまだはしりだった頃、子どものボランティア活動が掲載された小さな新聞記事が目に留まり、「あの子たちと一緒にやってみよう!」と決意。当初は批判もある中、「でもやらなきゃ!」という気持ちが強かった松浦さん。高齢者施設や保育園での交流活動等を通し「えらいね」「ありがとう」とほめてもらい、乗り気でなかった子も活動を楽しみにするほど変化が。

「そんな彼らも今では地域で働く人となり、親としても奮闘しています。そんな姿を見るととてもうれしいですね」と思いをはせます。どこまでも生徒の心に寄り添う松浦さん。大人になった彼らに街で声を掛けられることもあり幸せを感じるそうです。

現在は学校をあげてボランティア活動に取り組み、赤い羽根共同募金等の募金活動も行う生徒たち。「自分たちの呼びかけに応えてもらえたことや困っている人の役に立つという経験が子ども達の心を育み、郷土への愛着につながると思っています。福祉教育はふるさと教育でもあるんです」と話します。

他にも、子ども達と一緒になって交番の花苗植えや車いす体験等をし、「車いす体験は身近な障がいを知るチャンス。知っているか知らないかで人生が変わると思うんです。困っている人の目線に立って、人のために動ける大人になってもらいたい。子どもたちの心にその火種を灯すことが私達の役目ですね」と活動への想いを語ります。

原動力は亡きわが子への愛情

様々な活動を始めたきっかけについて、「始まりは亡きわが子への想いが原動力。53日しか生きられなかった娘から“お母さん、私の分までがんばって”と背中を押され続け、今があります。あの経験がなければ今の私はいません」と話します。お子さんへの想いを力に「障がいのある子を育てるお母さん達が集い、誰でも気兼ねなく泣いて、お互いの姿に学んでほしい」と一念発起し、おもちゃ図書館の活動に参加。資金調達には自ら汗を流し並々ならぬ努力をされたそうです。

また、PTA活動や四絡地区での親子の居場所づくり、出雲市駅周辺に花を植える活動等多くの取組をけん引してきた松浦さん。後進が育てばリーダーを任せ、年長者として愛を持って見守っているそう。朗らかに活動する松浦さんの周りにはいつも心強い仲間が。「たくさんの活動を仲間と分かち合い、楽しみながら深い絆でつながることができました」と話します。

「どんな人でもどんな活動でも平等であり対等であることを根本に取り組んできました。これまでを振り返ると未練はあるけれど、わが人生に悔いなし!ですね」とあふれんばかりの笑顔で語る松浦さん。今日も子どもたちの心に小さな火種を灯し続けます。