杉原 菜友・荒木 天花 -明るく楽しい未来を描けるように-

【社協だよりいずもvol.152 令和6年6月20日発行号掲載】
しまねハッピースマイルプロジェクトのメンバー。「学校に行きづらい子どもたちに楽しく過ごしてほしい」との想いから高校生から大学生を中心に活動中。

出会いを力に

杉原さんと荒木さんが中心となり、6人で活動する「しまねハッピースマイルプロジェクト」。島根県の大学生や高校生が「学校に通いにくい子どもたちが明るく楽しい未来を描けるようにしたい!」という思いで活動しています。

メンバーとの出会いは、市内にある次世代を担う若者の活動拠点「ユース出雲」。ここは、学生たちが様々な地域課題に向きあい、自分らしく挑戦する場となっています。人と人とのつながりの中で出会い、想いを同じくした6人で「ハッピースマイルプロジェクト」を立ち上げました。

不登校=悪いこと?

杉原さんは、大学に通いながら、ボランティアでフリースクールに関わりました。自身もこれまでに学校への行きづらさを感じた経験があり、“フリースクールってどんな場所なんだろう”という興味があったそうです。「そこに通う子どもたちと出会い、自分の進む道は他にあるのかもしれないと思うようになりました」と子どもたちから刺激とエネルギーをもらい、地元出雲市へ。

その後、出雲市のフリースクールについて調べ始めて感じたのは県外とのギャップ。「私が見てきた県外のフリースクールは学校との連携が密でした。先生が子どもたちの様子を見に来たり、卒業式等に校長先生が来たり。学校の体育館をフリースクールに開放するところもありました。フリースクールに通うことで学校の出席として認めてもらえることも大きな違いでした」と驚いたそうです。

調べていく中で、フリースクールや通信制高校の情報発信が少ないと感じた杉原さん。また、見聞きした情報の中から、不登校の状態から外に出られるようになる支援があまりない印象だったと話します。「不登校=悪いことというマイナスイメージが強いと思いますが、実際の子どもたちは、とてもエネルギーがあるんです。自分がサポートしているというよりも、逆に元気をもらっています。学校に行きづらい子が明るく、楽しく生きてほしい!という気持ちが募り、自分たちにできることをしたいと思いました」と想いを語ります。

子どもたちが納得できるための選択肢

荒木さんは、自身も学校に行きづらい時期があり、当時近くに同じような子が集まる場所も、情報もなかったそうです。「少し休んで心が回復したあと、“何かやりたいな”という気持ちの芽を摘んでしまわない、みんなでそれをサポートできる社会になったらいいなって。自分がしんどい真っ只中にいる頃、親も病院もその先の情報がなく、行き詰まっていました。今も、不登校の子の親御さんと話すと、通信制高校一つとっても情報を集めるのが難しいことがよく分かります。情報も少ない、通えるところも少ない、その中から自分で決めないといけない…子どもたちが納得できる選択ができるようになにかしたいと思っています」と話します。その想いから、市内の不登校親の会に知りたい情報についてアンケートを取り、それをフィードバックできる企画を検討中だそうです。

子どもたちの「やってみようかな」育む

子どもたちのためにメンバーでそれぞれの想いを話し合い、「地域の人にフリースクールのことや学校に行きづらい子どもたちのことを知ってもらうことから始めよう!」と、昨年夏、ある企画が動き出しました。それが、『もうひとつの学校夏祭り』でした。

イベントでは、『もうひとつの学校のことを知ってもらおう』をテーマとし、フリースクールに通う子どもたちも運営に携わりました。ミニゲーム大会や作品展示など様々なブースを作り、子どもたち自身ができることを伸ばしたり、外部の人と関わったりする場面を設定したそうです。

これを経て、「子どもたちの“やってみようかな”という気持ちを引き出せたと感じています。子どもたちがボランティアの学生と一緒に片付けをしていて、外部の人との関わりができていることもうれしかったです。安心できる大人と一緒に動いてみる、この一歩が大切だなって。そんな子どもたちの姿を見て保護者さんの受け止めにも変化があったと思います。活動への問合せも増え、動き出すきっかけになれたと感じました」とうれしい反応があったそうです。今年も8月の開催に向けて奮闘中です。

今できることを

「自分の将来はまだはっきりとは決まっていません。子どもたちを支援する活動は続けていきたいけど、仕事としてやろうとするとなにかギクシャクしてしまうと思うので…自分の生活基盤があって、それとは別に取り組んでいく方が自分には合っているかなと思います。これからも色んな方と会って、話をしてつながりづくりをしたいです。今、子どもたちのためにできることをしていく先に、自分なりの道を見つけていきたいです」と杉原さん。

荒木さんは、「不登校の子って、遊びやイベントにも行きづらさを感じたり、親に怒られることもあったり…。楽しい時間を過ごしちゃいけないんじゃ…という引け目を感じることもあるんです。なんとなく社会にもそんな風潮があると感じています。学校に行けなくても、“そんなこともあるよね!”という空気感が広がるといいなって。その子が“出てみようかな”という気持ちになった時の居場所の一つになれるように、まずは出雲でできることを続けていきたいです」と想いを語ります。

やわらかく、穏やかな雰囲気のなかに、芯の強さを感じるふたり。子どもたちの未来のために踏み出したそれぞれの一歩が人と人とをつなぎ、新たな連携が生まれ、出雲市で広がっています。