【社協だよりいずもvol.138 令和4年2月18日発行号掲載】
出雲市でシェルターや子ども食堂の「わくわく食堂」に取り組む。
自分たちにできることをできる範囲で
「人のために動き、助けることは自分にとって自然なことでした」と話す杉原さん。宗教家として活動するなか、ホームレス生活をしていた男性からのSOSをきっかけに6年前から独自にシェルター(一時保護施設)を始め、生活困窮等の生きづらさを抱える方が生活を立て直すまでをサポートしています。「もし目の前にいるのが自分の家族だったら…と想像するんです。手を差し伸べずにはいられませんよね。誰も取り残さないために自分たちにできることをできる範囲でしよう!という気持ちで今日まで動いてきました」と話します。
また、地域に求められている活動を模索し、出雲市社会福祉協議会(以下、社協)へ出向いて地域の困りごとをリサーチ。今では、子ども食堂の「わくわく食堂」や社協が行うフードドライブへの寄贈やボランティア活動に協力するなど活動の幅を広げています。
子育て支援とフードロス削減を目指して
子育て世帯を応援するために、わくわく食堂を始めたものの、子ども食堂=貧困のイメージが支援を必要とする方の利用を遠ざけているように感じ頭を悩ませたそう。「助けられる側になることに抵抗を感じる方もいると思います。イメージを変えるためにSNS等を使って”フードロス削減にご協力を!”と呼び掛けました。受け取られた方はいわば食べるボランティアさん。”ご協力ありがとうございます”と感謝を伝え、お互いに対等な関係づくりを大切にしています」と杉原さんは話します。
また、わくわく食堂になくてはならないのが心強い協力者の皆さん。食材の提供や調理スタッフ等で活動を支えています。地域の子育て世帯とつながる民生委員をはじめ、地元のために動きたい方、以前わくわく食堂を利用された方も活躍中です。「こんにちは!たくさん食べてね!」の元気な声で受け取られた方も笑顔に。協力者の皆さんの”活動がとにかく楽しい!”という気持ちがあたたかい空間を作っています。
今後の取組について、「開催頻度や食数を増やす、配達をする等目指すところには程遠く発展途上です。自分でできる活動には限界があるので地域全体に取組が広がるといいですね。いつか子ども食堂がなくてもいい社会になるまでは必要な取組だと思っています。これからは、自分が広告塔となってPRし、立ち上げ支援もしていきたいですね。」と話します。
助けられる側から助ける側へ
シェルターやわくわく食堂の活動を通し、どこにもつながっていない方、制度に結びつかない方、生きづらさを抱えた方と出会ってきた杉原さん。コロナ禍により孤独や孤立が叫ばれ”居場所”の重要性を再確認したそうです。「ニュース等を見ていると罪を犯す人の背景にも生きづらさを感じます。出会う人が違えば人生が変わっていたのではと考えさせられました。自分が開いているこの場所が、どうしようもなくなった時の拠り所になれるといいですね」と話します。
「シェルターには、生活に行き詰まり歩き方が分からなくなった方が多いです。共に過ごす中で考え方や視野を広げられるような関わりを続けています。次第に入居者同士でつながりが生まれ、支え合う姿を見るとこちらもうれしいですね。いつか一人で歩けるようになり、次は誰かを助ける側になってもらえたらこれ以上のことはありません」と一人ひとりの未来を願います。
“誰一人取り残さない”という強い思いを持ちながら、自分にできることをできる範囲で続ける杉原さん。背伸びしない自然体の福祉活動に期待が寄せられています。