伊藤 優子 -子どもも大人もあるがままの姿で-

【社協だよりいずもvol.142 令和4年10月20日発行号掲載】
多伎町のお母さんが中心となり、子ども向けのイベントや自然体験活動を企画・運営する「たきっこ☆キラリ」代表。
30年以上続いた「多伎町母親クラブ」を引き継ぐ形で結成し8年目を迎える。(令和4年10月現在)

子どものアイディアは全部「いいね!」

次世代を担う子どもたちが、地域の人や自然との関わり合いの中であるがままの姿を大切にされる場を作りたいとの思いで活動する伊藤さん。年2回の「修行(忍者)遊び」(コロナ禍は休止)と月1回の「キラリの森遊び」を開催しています。

「今の子どもたちを取り巻く環境は変化し、危険・禁止が増えて集団から個の遊びになりがちです。近所に住んでいても、知らない人とは話さないという風潮からあいさつすら交わさないこともあります。私たちの遊びを通して、町で会った時に“あ!あの時のおっちゃん!”と会話が弾んだというエピソードを聞くとうれしくなります。知らない人が知ってる人に変わる場になっています」と話します。

また、「忍者遊びの中では子どもも大人もみんな対等です。教える・教わるの関係は作らず、遊びの流れもみんなで決めます。子どもたちからのアイディアは否定せず全部“いいね!”。その結果、移動はほふく前進だけ!となることも…(笑)」と大人がありのまま受け止め、一緒に楽しむことを大切にしているそうです。活動を続けていくうちに「次も行きたい!」と声掛けをしなくても人が集まる人気イベントになっています。

誰かに認められる経験が自己肯定感を育む

伊藤さんが活動を始めたきっかけは、保育士の研修で知った忍者修行遊びに感銘を受けたことだったそうです。「多伎町の子どもたちにも伝えたい!」と、まずはお子さんと一緒に県外で開催されたイベントに参加。子どものいきいきした姿に「こんな表情になるんだ」と感動し、溢れる「いいね!」の声掛けにご自身も認められた気持ちになったそう。

「私自身、どこか不安で自信がないまま大人になりました。イベントに参加して、人から認められることが自信につながるんだ、同じように救われる子がいるかもしれない、と湧き立つ気持ちでとにかくやってみようと思ったんです」と当時を振り返ります。

その後、知り合いのお母さんたちに声を掛け、たくさんのアイディアと仲間が生まれ、活動に至りました。「ゼロからのスタートでしたが、動いているうちにいい話やいい人達に出会い、ここまで続けて来られました。同じ思いで活動しているメンバーはもちろん、地域の方が“やっちゃーわ!”とキラリの森の草刈りや薪の提供などを助けてくださり本当にありがたいですね。ご厚意には甘えさせていただいています。(笑)できることをできる範囲で、皆さんの手をお借りしながら活動をつなげています」と仲間への感謝を話します。

子どもたちの「個」の力を信じて

たきっこ☆キラリの活動では、子どもたちの主体性や探求心をかき立てるため、つい言いがちな「危ない、汚い、早く、ダメ」などの禁止用語は極力避けているそうです。「今の子どもたちは何もないところから自分で考えて生み出す機会が減っていると感じます。場を作らないと経験できない時代になっていますよね。私たちはその“場”をセッティングしていますが、何より大人が子どもを“個”として信じられるかどうか、これが大切です」と伊藤さんは話します。

「森で駆け回って転んだら…、包丁で手を切ったら…など心配ごとはたくさんあります。でも、信じて見守ります。実際、遊び終わるとケガをしているのは大人なんですよね。(笑)子どもたちの力には学ぶことが本当に多いです。意欲的に動く姿はエネルギーに溢れて、表情もいきいきと輝いて…やっててよかった!と感じる瞬間です」と笑顔で語ります。

一方で、コロナ禍によりイベントを中止したり、他団体との交流ができなかったりと思うような活動ができない状況に頭を抱えることも。しかし、飲食をやめ、時間を短縮しての開催や小学校のクラブ活動に関わり新たなつながりを生み出すなど活動の歩みは止めません。「できないことも多いですが、できることを続けて、町内だけでなくたくさんの方や団体とつながって活動の幅を広げていきたいですね」と意欲を語ります。

「子どもたちへの想いは人それぞれだと思いますが、自分を認めてもらえる経験を通して、大人になっても誇らしく故郷を語れる子になってもらえたらうれしいです」と笑顔で話す伊藤さん。子どもも大人もありのままの姿で安心できる場所としてたきっこ☆キラリは輝き続けます。

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