今中 美栄 -地域の「食」と寄り添いながら-

【社協だよりいずもvol.143 令和4年12月20日発行号掲載】
島根県立大学看護栄養学部健康栄養学科教授。(令和4年12月現在)

はじまりは「地域からの支え」

島根県立大学で教授として日々学生とともに学び、指導している今中さん。新型コロナウイルスが拡大し始めた二年前、学生からは「バイトが出来ない」「仕送りが無い」という声があがっていました。そんな時この状況を心配した、地域の住民やコミュニティセンター、社会福祉協議会から学生たちへ食品などの支援物資が多く寄せられました。

暖かい支援を受けることが重なる中で自分自身も「困っている学生のために何かしたい」という想いを抱いていた時に、ちょうど社会福祉協議会が行うフードドライブの活動に携わる機会がありました。「食を支援する活動を通して、大学としても何かしなければならない」という想いがより一層強くなったそうです。

今中さんのその想いがカタチとなり、令和3年4月には健康栄養学科の学生が中心となり、新入生へ手作りのお弁当や地域住民から寄贈された食品を配布するイベントが行われました。イベントを通して今中さんは「寄贈いただいた食品の多さに驚きました。食品や弁当を受け取る学生たちの笑顔を見て、私たちを支えてくれる人がこんなにいたんだと改めて実感しました。」と感激した様子で語ります。

同年12月に行われたフードドライブ活動には学生たちがボランティアとして参加。当日、配布する食品のパッキングの作業を行いました。「支えてくれた地域のみなさんに恩返しがしたいと思っていましたが、新型コロナウイルスのこともあり、直接地域に出て活動するチャンスがありませんでした。フードドライブの活動のお手伝いという形で恩返しができ、地域のみなさんと間接的ではありますがつながるきっかけができたことは、とても良かったと考えています。」と新たなつながりに喜びを感じています。

食・地域・福祉のコラボ

フードドライブの活動をきっかけに、「食を通じて地域とつながりたい」という想いが強くなった今中さん。「何かやりたい!食について地域に伝えたい!」と考えていたところ、子ども食堂とつながりができ、子ども食堂の活動に携わる人を対象にミニ講座を実施することになりました。管理栄養士を目指す学生たちが講師となり、食品の取り扱い方法などを伝えました。

「地域に出て住民のみなさんと関わると、いろんな人が多様な生活していることに気づけます。その生活に欠かせない『食』を支えることは地域の皆さんを支えることになるんじゃないかと思います。まずは地域に出て、いろいろな価値観を知ってもらって・・・。そしてそこから考え方や想いに触れて、悩んだり考えたりしながら自分たちにできることを見つけていければいいですね。」と学生への想いを語ります。

人に寄り添う食を

学校の中だけで学ぶのではなく、地域へ出かけてたくさんの人たちと関わり、様々な考え方に触れることが大切だと考える今中さんは、地域での関わりを通じて専門分野である「食」と「福祉」には通じるものがあると感じたそうです。「福祉は生まれてから死ぬまでの人生をサポートします。そのために、一人一人の生活をみて支援するということは栄養を考えるうえでも大切だと思います。福祉も栄養もその人の生活をみて支援していて同じ視点で考えていたんだな。」と話します。

「生きている限り人は必ず食にかかわっています。その人の食がみえてくるとその生活もみえてくるんです。食を支えることはその人の生活を支えることに直結しているんですね。」と想いを語ります。「相手の想い、地域の特色などを踏まえて相手の生きることを支え誰にでも寄り添える管理栄養士でありたい。」と話す今中さん。

支えてくれる地域の皆さんへの想いを胸に、これからも人に寄り添う食を目指して学生とともに活動を続けます。